脳が脳を支配する?


 

 先日ご協力いただいた、障がい児Sちゃんのお母さんのメモを抜粋してご紹介します。



  

  ◇DVD鑑賞中
 机に上がったので、
 ○母「机に上がったらダメ!降りなさい!」
 ↓
 降りない

 ○母「降りんのやったらテレビ消すよ」
 ↓
 降りた



  ◇お風呂に入るとき
 ○子「アンパンマン見る!」
 ○母「だめ。もうお風呂入ろう!」
 ○子「アンパンマン!」「アンパンマン!」
 ○母「アンパンマン見たいん?じゃあ見よう! でも、今はお風呂の時間やけん、先にお風呂に入ろう」
 ○子「はい!」

 否定から入ると聞く耳を持たない。
 いったん同調してから「でも・・・」と今すべき事を伝えると納得して行動に移した。
 かんしゃくも起こさなかった。
 ↓
 お風呂から出ても、テレビをつける要求なし。




 
 この生きた資料から、いろいろな事が見えてきます。

 「DVD鑑賞中」の方では、以前に引用させていただいた、

 東京女子医大医学部長 岩田誠先生の著書

 「私はチョムスキーが取り組んできた、万人に共通の基本的な文法能力 (文章構成能力) の土台になっているヒトに固有の遺伝構造は、人間の文法能力だけを支えているのではなく、もっと一般的な知的能力全体を支えているものではないか、と思うのです。
  ただしここで知的能力とは、理性と感情とか、知性と感性などに二分して考える場合の理性や知性の能力ではなく、いわば知情意一体の能力です。
  そういう能力を考えることは、アントニオ・ダマシオの説 (行動選択のために役立つ記憶には、行動結果として生じる情動が刻印されているという説) とうまく符号しているように思われます。」

 この事が思い出されます。


 知的遅れがあったとしても、未開花の文法能力が彼をこのような行動に駆り立てたのだと思います。

 正に、アントニオ・ダマシオの説に符合する行動です。  それは行動結果として生じるネガティブな情動が、彼にブレーキをかけたという事です。

 という事は訓練如何によって、もっと高度な自主的行動の可能性を秘めているという事なので、引き続き知能訓練を続けていくべきと考えます。



 また「お風呂に入る時」では、僕の「同調する」という概念ではなく、まず「同意する」という事から入っていると考えます。

 そしてこれはすべからく「本人の意思を尊重する」とも言えます。

 
 とかく障がい児は生活の中で叱られる事が多く、それでなくても周囲の状況に合わせた行動が取りづらい年齢のこの子は、抑圧されている事が多いと思います。

 ですから、まずは「同意」。  そして、その後の言語による行動理由の提示後の行動抑制が、本人の気づかないうちの知的訓練となっていると思います。


 それは正に、「言語による脳間操作」です。

 
 実は言語には、2種類の操作系があります。


 一つは「脳内操作系」、二つ目は「脳間操作系」です。

 二つ目の「脳間操作系」とは、言語による相手の脳への操作という事です。

 ですから僕たち人間は、言語によってコミュニケーションを図ろうとしていると思いつつ、実は相手の脳を自分の脳が「支配」または「操作」あるいは「同調」させているという事に他ならないのです。

 

 障がい児の場合、この言語による脳間操作が非常に重要です。

 それは一律にこうすれば良いというものはなく、個々人、そしてその時の状況に応じて、指導者が適切な言語により対象者の脳を操作しなくてはいけません。

 

 このような事から、「同意」だけでも「否定」だけでもだめで、多岐にわたる汎用性のある思考で生み出した言語活動が、指導者には特に求められます。


 そして障がい児の脳も、指導者の脳を操作しようとしている事を踏まえ、その脳に指導者は完全に操作されず適切な対応をしなくてはいけません。




 「脳は脳を支配しようとする。」


 これが僕たちの知っておかなければいけない重要な言葉の一つなのです。









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テーマ:英才・幼児・早期・障害児教育 - ジャンル:育児

【 2008/10/09 01:45 】

| | コメント(2) | トラックバック(0) |
<<風水的に東は赤だそうで・・・・。 | ホーム | 今日もノーベル賞受賞。 それでも不思議の国日本。>>
コメント
--- 営業 ---

えー おいらの職歴の中で ルートセールスが6年間と言うのがあるでやんすが

お客様の要望や 意見の肯定から セールストークに入るはセオリーになっているでがんす

障がいがあっても お客さんでも夫婦でも友だちでも
否定から入られれば ムキになるし
痛いところ突かれたら ムキになるし

いい関係を持ちたかったら 相手の肯定から入る やはり これも万人に言えるでがんすよね。。。
たけちゃん * URL [編集] 【 2008/10/09 15:59 】
--- コメントありがとうございます。 ---

 
 先生のおっしゃる通りだと思います。

 特に子どもやしょう害者にとっては、とても大事な事だと思います。

 自分自身、まだまだ学ぶことがおおいなぁ、と痛感しています。

あっちゃん先生 * URL [編集] 【 2008/10/09 22:19 】
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